

社長!スカパーって
いつから
宇宙の会社に
なったんですか!?
大久保佳代子×米倉社長 特別対談
日本初の民間通信衛星の打ち上げ以来、アジア最大規模の宇宙事業社として宇宙ビジネスを展開してきたスカパーJSAT。通信・放送サービスの提供に加え、宇宙データ活用や防災・安全保障分野にも注力する。
本企画では、スカパーJSATの代表を務める米倉英一社長と、番組出演を通じて「スカパー! 」との接点を持つタレントの大久保佳代子氏が対談。衛星通信のインフラとしての役割や宇宙ビジネスの未来に至るまで、同社の幅広い取り組みについて語り合った。
創業以来ずっと宇宙企業
大久保 スカパー!さんでは、ゴルフバラエティ番組「大久保佳代子のずたぼろゴルフ」に出演させていただき、いつもありがとうございます。
米倉 こちらこそお世話になっています。
大久保 番組を持っているからこそ、スカパー!が衛星放送の会社ということは知っているのですが、逆にそれくらいしか知らなくて。宇宙事業をしていると聞いたのですが、本当ですか?
米倉 本当です。スカパー!を運営するスカパーJSATは、最初から宇宙事業をしておりました。
大久保 えっ! 最初から?
米倉 1989年に日本の民間企業として初めて通信衛星を打ち上げた企業が前身で、CS(通信衛星)放送事業の企業等と合併したのが、スカパーJSATです。
大久保 40年近くも前じゃないですか!
米倉 そう。これまでに打ち上げた通信衛星の数は累計30機以上。現在は17機の静止衛星を保有するアジア最大規模の衛星通信事業者となっています。
大久保 アジア最大規模ですか!すごいですね。
米倉 衛星の運用や管制も自前で行っているのが当社の特長です。現在は横浜と北海道、茨城、群馬、山口、沖縄の6カ所に運用拠点があります。また、自社の衛星だけでなく、国内外の民間企業や政府機関の衛星運用を受託する事業も行っています。私たちは放送事業者であるだけではなく、通信衛星という資産を使って映像コンテンツや通信インフラを提供する「宇宙実業社」なんです。
大久保 ごめんなさい。ぜんっぜん知らなかった!

米倉 いえ、多くの人のリアクションはそうです(笑)。
大久保 ところで、私、宇宙のことは何も知らなくて、基本的なところを教えていただきたいのですが……。
米倉 なんでもどうぞ。
大久保 通信衛星ってどんなときに使うんですか?
米倉 たとえば、災害が発生したときです。地震や津波などの大規模災害が発生して地上の基地局が故障すると、通信障害が発生します。そのとき、被災地にアンテナを設置し衛星を介して通信を確保することで、通話やインターネットを利用できます。カバー範囲が広く、地理的な制約を受けない通信衛星は、災害に強いという特長で様々な活用がされています。
大久保 暮らしに欠かせないライフラインを守ってくれるんですね。
米倉 あとは……。大久保さんは、ロケの移動などで飛行機に乗ることもありますよね?
大久保 もちろんです。
米倉 最近、Wi-Fiを使える飛行機が増えたと思いませんか?
大久保 確かに! 飛行機で使えるようになっています!
米倉 航空機や船舶などの移動体に向けたインターネット通信サービスも、当社の宇宙事業で提供しているサービスのひとつです。スカパーJSATが提供する衛星通信の強みは通信が途切れにくいこと。複数の衛星を所有しているため、航空機や船舶がひとつの衛星の通信範囲外に移動したときも、別の衛星から電波を届けられるんです。
大久保 個人的なことを言えば、飛行機の中では仕事の連絡から離れてゆっくりしたいのですが(笑)。でも、移動中に仕事や調べ物をしたり、音楽を聴いたりと、好きなことができる選択肢が増えるのはいいことですよね。
米倉 そうなんです。当社はこれから「Superbird-9」と「JSAT-31」という2つの通信衛星を打ち上げ予定です。両機は最先端のフルデジタル通信機器を搭載しているので、より広い範囲に対して効率的に高速通信を届けられるようになります。期待していてください。
観測衛星で撮影したデータを分析
安全・便利な暮らしを実現
大久保 宇宙事業は夢がありますね。

米倉 これはまだ序の口です。当社の通信衛星は、地上から約3万6,000㎞上空の「静止軌道」にあります。地球の自転と同じ速度で移動するので、地上からは止まって見えます。
大久保 だから「静止」なんですね。
米倉 静止軌道には、当社の通信衛星のほか、「ひまわり」でおなじみの気象衛星や日本版GPSとも言われる「みちびき」などがあります。
大久保 聞いたことあります。
米倉 そこからぐっと地球に近づき、地上2,000km以下の「低軌道」に今たくさんの衛星が打ち上げられています。
大久保 低軌道の衛星では何ができるんですか?
米倉 いろいろありますが、私たちが力を入れようとしているのが、衛星による地上の観測です。カメラをイメージしてもらえるとわかりやすいのですが、低軌道衛星に搭載した光学センサーは昼間の晴天時には非常にクリアに地表面を撮像できます。そこから、地球で何が起きているか、起きそうかを知ることが可能です。たとえば、洪水が発生した場合に、どこまで浸水しているかを現地に人が赴かずとも被害状況を確認できます。また、植生や地形を観測することで、地滑りが発生しやすい箇所を特定するという使い方もあります。農業では、農園での生育管理や、栽培の適地探しにも衛星データが活用されつつあります。
大久保 人の目が届きにくい所こそ、衛星の出番なわけですね。
米倉 最近は地政学的リスクが高まっていますが、安全保障領域でも軍事行動の監視などで役立っています。
大久保 自然災害も紛争も、世界中で起こっていますもんね。それを未然に防ぐ手段があるのは安心です。
米倉 いわゆる写真を撮れる光学的なカメラだけでなく、SAR(合成開口レーダー)というセンサーを積んだ観測衛星もあります。レーダーは雲を透過するので、太陽の光がない夜間や雲がかかっているときでも、24時間365日地表の観測ができるんです。
大久保 ちなみにSAR衛星では、何ができるんですか。
米倉 レーダーの反射で地形変化などを把握することができます。最近、地滑りや陥没によるインフラの損壊が話題になっていますよね。SARで取得したデータで斜面やインフラの変動を時系列で比較することで、災害の危険性を評価し予防・保全が可能になります。
大久保 ニュースでよく見聞きするインフラ老朽化の対策になるんですね。観測は、リアルタイムでできるんですか?
米倉 それを目指しています。低軌道の衛星は約90分間で地球を1周回っています。衛星からデータを受取れる基地局は限られているので、どうしてもタイムラグが発生してしまうんです。その問題を解決するため、コンステレーション構築への取り組みが進んでいます。
大久保 コンステレーション?
米倉 英語では「星座」を意味していて、衛星で星座のようなフォーメーションを組むことです。1機の衛星だけではデータ取得できる場所と時間が限られます。でも、それを10機20機と増やして連携させれば、広い範囲の情報をリアルタイムに近い間隔でデータを取得できるという考え方です。
大久保 へー、すごいですね!
米倉 そういう宇宙からのデータを分析して、防災や生産性の向上を実現する「スペースインテリジェンス事業」にスカパーJSATでは力を入れています。現在、当社が分析する衛星データは、パートナー企業から提供を受けたものです。今後は、自社で次世代光学観測衛星を保有し、撮像データ等を販売できるようにします。まずはその手始めとして、米国企業「Planet Labs」と協業する現地法人会社を設立し、約400億円を投資して低軌道の衛星10機を調達、運用することを2025年2月に発表しました。自社保有の低軌道観測衛星によるコンステレーション構築に向けて動き出したというわけです。既存の静止衛星だけでなく、新たに低軌道衛星なども加えたマルチな衛星インフラから多角的な宇宙ビジネスを展開したいですね。

宇宙のサステナビリティ、デブリ除去――
スカパーJSATの次なる挑戦
大久保 宇宙空間に無限の可能性を感じてきます。
米倉 社会課題として取り上げられているサステナビリティにも寄与するんですよ。
大久保 どういうことですか?
米倉 宇宙空間では、地上よりも強力な太陽光を動力に変えられます。再生可能エネルギーだけを使うので、温暖化ガスや公害の心配がありませんよね。データセンターなど、膨大な電力を消費する施設を宇宙で建設して運営することも考えられます。
大久保 壮大な話ですね。

米倉 夢のような話でいえば、何かと話題のイーロン・マスク氏が率いるスペースXは、かつてはSFの世界だった火星への有人飛行を目指しています。火星に到達するまでは6カ月の時間がかかると言われています。
大久保 暇を持て余しそう(笑)。
米倉 火星は極端かもしれませんが、一般の人が宇宙空間に滞在する未来は近いでしょう。ZOZO創業者の前澤友作さんが日本の民間人として、初めて国際宇宙ステーションに滞在したニュースは記憶に新しいところです。また、アメリカのNASAが主導する「アルテミス計画」では、月面で人類が長時間滞在することも計画されています。そんな人たちにスカパー!の電波を提供して、映画やスポーツを見られるようにしたらどうだろうと想像が膨らみます。
大久保 国際宇宙ステーションでは地上波は見られないんですか?
米倉 もちろん地上波も衛星を経由すれば見られますよ。大久保さんの番組も宇宙に届けられます。
大久保 よかった(笑)。宇宙食もどんどんおいしくなっていると聞きますけれど、地球にいるのと変わらなくなりそうです。
米倉 そんな世界が10~15年後くらいにくるんじゃないかと思っています。
大久保 もうすぐですね。
米倉 宇宙利用が増えるにつれて問題になってくるのが宇宙ゴミの問題です。デブリとも呼ばれます。

大久保 どうしてゴミが出るんですか?
米倉 衛星が壊れたり、脱落したりした部品が宇宙空間に漂ってゴミになります。
大久保 そっか、重力がないから落ちてこないんですね。
米倉 高速で宇宙空間を移動するので、小さいゴミでも衛星に衝突すると大損害が発生するんですよ。衛星がどんどん増える今、デブリへの対策が必須ということで、スカパーJSATは、デブリを除去する会社を作りました。微弱なレーザーを衛星からデブリに照射して、大気圏へ移動することで消滅させる技術を開発しています。
大久保 まるでSF映画みたいですね。すごい!
米倉 ほかにも、通信サービスを提供する新たな手段として、成層圏を飛ぶHAPS(高高度プラットフォーム)を利用した通信の実用化に向けた研究を始めました。
大久保 ちょっとわからなくなってきました。
米倉 簡単にいえば、HAPSとは、通信機能をもったグライダーみたいなものです。
大久保 何に使えるんですか?
米倉 芸能の仕事で例えてみましょう。屋外のライブやコンサートを中継しようとする場合、中継車を出しますよね。その場所が遠隔地で通信衛星による中継が必要になったときに先ほどの通信システムが実現したら、ドローンなどの撮影機材で撮った映像を、HAPS経由で全世界に配信できる時代も来るかもしれません。
大久保 私たちの仕事の幅も広がりそう!
米倉 期待が広がるでしょう。宇宙事業をもっと盛り上げていくためには、たくさんの人の力が必要です。そこで、スカパーJSATでは協業加速のため、宇宙関連のスタートアップやベンチャーファンドを対象とした100億円の投資枠を設定しました。
大久保 100億円も! 無限の可能性がある宇宙事業に、幅広い業種の人たちが参入したらもっとすごいことができそうですね。聞いてるだけでワクワクしてきました。
米倉 この対談を通じ、宇宙に関してこんなに夢を語れる「スカパーJSAT」という会社があることを、たくさんの人に知ってもらえたらうれしいです。
大久保 スカパーJSATさんの宇宙事業が、社会をもっと良くしてくれると期待しています!

(2025年3月17日時点)
- 「未知を、価値に。」通信
- 宇宙事業
- 社長!スカパーっていつから宇宙の会社になったんですか!?
